植松・松本研究室について

私達は、情報通信に関連する性能の理論的限界を求める研究を行っています。

この研究分野は情報理論と呼ばれています。少し前までは、情報をより高速に送るためにはより多くの電力かより広い周波数帯域を用いる必要があると考えられていました。ところが、無線通信においては、電力や周波数帯域を増加させる代わりに、送受信アンテナ数を増やすことで1秒間に送ることができる情報量(通信路容量)を増加できることが1995年に明らかにされました。この研究成果により、複数のアンテナを用いてより高速に情報を送る方法が近年活発に研究されており、複数アンテナを用いた新しい無線LANの規格の通信速度は実に毎秒100メガビットを超えます。このように情報通信の様々な問題における性能の限界を明らかにすることは、新たな通信方式の開発において非常に有益な研究であることがわかります。

他方、情報理論ではデータの系列をエントロピーと呼ばれる割合まで圧縮しても、元に戻せることが明らかにされており、実際にデータ系列を最初から順番に読んで圧縮する効率的なアルゴリズムも1977年にZivとLempelにより示されました。ZivとLempelのアルゴリズムはWinZipなどのパーソナルコンピュータの圧縮ソフトで使われ、今ではコンピュータの利用において必要不可欠なものになっています。また、情報理論の1分野として始まった誤り訂正の技術により、CD、DVDやQRコードに汚れや傷がついても、記録された情報を誤りなく読み出すことができます。

このように情報理論の成果は日常生活の様々な部分で既に役に立っており、私達は情報理論の研究を通じて社会に貢献することを目指しています。